税務相談
月刊不動産2002年8月号掲載
不動産収入の計上時期について教えて下さい。
0 井出 真(井出真税理士事務所)
Q
不動産収入の計上時期について教えて下さい。
A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。
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個人の不動産所得は暦年で、法人の損益は会計期間で計算します。したがって、いつの時期の収入なのかは重要であり、税金の計算上問題になることがあります。
1.通常の賃貸料収入
契約や慣習によって支払日が定められているときは、「定められた支払日」が収入の時期です。支払日が定められていないときは、次の2つに分かれます。まず、請求があったときに支払うものは、「請求の日」です。それ以外は、「支払いを受けた日」です。つまり、家賃の支払いを受けていないときでも、それは、未収金として「定められた支払日」や「請求の日」に収益として計上しなければならないときがあるということです。
2.供託家賃
こちらも2つに分かれます。まず、賃貸料の額に関する係争の場合です。このときは、供託された金額は、上記の通常の賃貸料収入によります。もしも、供託金を超える収入が得られるときは、「判決、和解等のあった日」に供託金を超える部分の収入を計上します。次に、賃貸借契約の存否に関わる係争の場合です。このときは、「判決、和解等のあった日」にそれまでの期間に対応する賃貸料相当額を全額計上します。
3.礼金、権利金、名義書換料、更新料
賃貸を開始したときに受け取る礼金等については、「引き渡しの日」に収益として計上します。ただし、「契約の効力発生の日」でもよいこととされています。既に引き渡している場合の更新料等については、「契約の効力発生の日」となります。
4.敷金、保証金
借家人退出時に全額返還する敷金等は、収入に計上しません。ただし、借地権の設定時に地主が受け取った保証金等は、一部例外があります。
次に、例えば「テナント退出時に預かり保証金50万円の2割を償却します。」という契約があったとします。この場合、テナントがいつ退出しても、返却されるのは40万円(50万円×1-0.2)となります。つまり、家主の収入10万円は、テナントに部屋を貸したときに確定しています。
これに対し、「2年以内に解約したときに限り保証金50万円の2割を償却します。」という契約では、2年以内に賃貸借を解約され、10万円を返さなくてもよいという事実が生じた日が収入の時期となります。不動産所得の収入計上時期