税務相談

月刊不動産2015年1月号掲載

シェアハウスとして新築された住宅に係る不動産取得税の1,200万円控除の適用

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

シェアハウスとして新築された住宅に係る不動産取得税の1,200万円控除の適用について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.不動産取得税の概要

    (1)不動産取得税の計算方法

    不動産取得税は、建物や土地を取得した者に対し不動産の所在する都道府県が課税する税金です。

    不動産取得税は、課税標準に税率(原則4%)を掛けて計算します。課税標準は、原則として建物と土地の取得時における固定資産税評価額です。

    (2)新築住宅を取得した場合の課税標準の特例

    床面積が50㎡以上240㎡以下の新築住宅に係る不動産取得税については、その課税標準の計算上、住宅一戸につき1,200万円(共同住宅等については、居住の用に供するために独立的に区画された一の部分で、政令で定めるものにつき1,200万円)が控除されます。

    2.シェアハウスとして新築された住宅に係る不動産取得税の課税標準の特例の適用

    (1)シェアハウスの取得に係る不動産取得税の取扱い

    建物賃貸の新たな手法として、複数人に住宅を賃貸し、台所や風呂、トイレ等は共同で利用してもらう「シェアハウス」が注目されています。

    シェアハウスとして新築された住宅を取得した場合、ほかの家屋の取得の場合と同様に不動産取得税が課税されますが、その計算上、上記1(2)の特例(以下、「1,200万円控除」といいます)の適用の可否が問題となります。

    この問題については、シェアハウスとして新築された住宅について1,200万円控除の適用があるかどうかで争いとなった事例があり(平成25年7月16日東京都裁決)、実務の参考になります。以下、その概要を紹介します。

    (2)東京都の裁決事例から見たシェアハウスに係る1,200万円控除の適用

    問題となったシェアハウスは、2階建て軽量鉄骨造家屋の1階の区分所有建物部分で、床面積が約80㎡の住宅です。この住宅のうち、独立している部屋は8㎡前後の大きさで6室あり、台所や食堂、トイレや浴室等は共同して利用するスタイルになっていました。

    東京都は法務局からの通知を受けて、平成24年12月に現地調査を行い、1,200万円控除の適用がない住宅と判断し、平成25年3月に家屋を所有する納税者に賦課処分を伝える納税通知書を送付しました。しかし、シェアハウスを取得した納税者は、「シェアハウスは全体で1世帯用の住宅としての構造にもなっているので、1,200万円控除は可能だ」として不服申立をしたことから争いとなったものです。

    納税者からの不服申立を受けて審理した東京都は、まず1,200万円控除については、前述1(2)のとおり住宅が共同住宅等である場合には、居住の用に供するために独立的に区画された一の部分で政令で定めるものにつき、適用すると地方税法で規定されていることを確認しました。更に、この独立的に区画された一の部分とは実務上、「構造上一世帯が独立して居住できるように区画された部分をもって1戸とする」こととされ、「寄宿舎、専門下宿屋等で、一世帯一室で炊事場、洗面所等がすべて共用であるものについては、その一室をもって1戸とするもの」としています。

    その上で東京都は、政令(地方税法施行令37条の16第2号)により、この1戸の面積が賃貸の共同住宅の場合、40㎡以上240㎡以下であることが要件になっていると指摘し、更に同政令で、「住宅に共同の用に供する部分(中略)があるときは、これを共用すべき独立的に区画された各部分の床面積の割合により当該共同の用に供される部分の床面積を配分して、それぞれその各部分の床面積に算入するものとする」と定められていることを確認しています。
    問題のシェアハウスの場合、各独立の居住部分の床面積に、台所、食堂等の共同の用に供する部分の面積を各独立部分の面積割合で配分すると、1戸当たりの床面積は12.55㎡~16.36㎡となり、特例が適用できる前述の床面積要件(40㎡以上)を満たさないことになります。このため東京都は、そのシェアハウスについて1,200万円控除の適用はないと判断しています。

    また、問題の住宅が一世帯用の住宅の構成にもなっているとの納税者の主張について、東京都は「本件家屋は台所、食堂、トイレ、浴室等は共同して利用するものの6室の居住部分は明確に区切られ独立して生活を営むことが可能な構造となっており、地方税法にいう共同住宅等に該当することは明らか」として、納税者の主張を退けています。

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