賃貸管理ビジネス

月刊不動産2025年10月号掲載

管理獲得のためのマンダラチャート活用法

代表取締役 今井 基次(みらいずコンサルティング 株式会社)


Q

 これまで賃貸仲介を中心に行ってきましたが、今後は管理物件数を増やすことが目標です。心機一転取り組みたいところではありますが、最近はスタッフの入れ替わりもあり、正直、何から手をつければいいのかわかりません。社内の方向性もなかなかまとまらず、いい方法があれば教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  •  まずは、スタッフ全員で「目標達成のための共通言語」をつくることから始めてみてはいかがでしょうか。その手段としておすすめしたいのが「マンダラチャート」の活用です。一人ひとりの行動や成果を評価する前に、チーム全体で課題を洗い出し、何を目指し、どう取り組むべきかを可視化して共有することで、組織としての一体感と方向性が生まれてきます。

  • 成果が出にくい「管理獲得」には中期的視点が必要

     新規の管理物件獲得は一朝一夕にはいきません。多くの会社が特定の営業担当者のスキルに依存しがちですが、会社全体で課題を整理して取り組むことが大切です。そのためにも、最初にゴール(目標)を明確に設定する必要があります。もっとも、賃貸管理物件の獲得はすぐには成果が出にくいので、3年程度の中期的なビジョンを目標に掲げるとよいでしょう。あまりに長期的な目標だと、人事異動や退職などで最初に目標を立てた人がいなくなり、計画が頓挫しかねません。そのため3年程度で達成する目標設定が現実的です。
     そこで、マンダラチャートの出番です。マンダラチャートとは、目標達成や問題解決を視覚的に整理できる9×9マスのフレームワークで、中央にメインの目標を置き、その周囲に8つの関連要素を書き出すことで、目標達成までの道筋を明確にする手法です。
     自己啓発やビジネスの現場でも広く活用されており、特にメジャーリーグで二刀流として活躍する大谷翔平選手が高校時代にこのチャートを使い、「ドラフトで8球団から1位指名される」という夢を中心に「球速を上げる」「体力をつける」など具体的な行動項目を設定して目標を達成した例は有名です。このように、マンダラチャートは目標の可視化と具体化に優れており、賃貸管理の現場でも応用できるでしょう。

  • 数値目標を中心に据え、具体策を展開する

     実際にマンダラチャートを活用してみましょう。たとえば現在管理戸数が500戸であれば、「3年後に1000戸に倍増させる」というように、数値でわかりやすい目標を中心に設定します(図表参照)。高い目標設定は重要ですが、あまりに非現実的だと「絵に描いた餅」になりかねません。まずは3年後のゴールを掲げつつ、1年後には○○戸といった中間目標も設定して走り出すことが大切です。
     中心に据えた目標の周囲には、その目標を達成するために必要な8つの要素を書き出します。先ほどの例では、マーケティング施策、評価体制、営業エリアの特定、ターゲット(顧客像)の明確化、CRM、スキルアップ、他社との差別化、成功事例といった要素が考えられます。これらの中から8項目をマンダラチャートの中央と周囲の9マスに当てはめたら、次はそれぞれの要素を中心に据えて、さらに具体的な施策を書き込んでいきます。
     たとえば、マーケティング施策のマスでは、以下のような具体案が考えられます。
    ・管理メニューの強化(自社の管理サービス内容を充実させ、他社との差別化を図る)
    ・管理受託パンフレットの改訂(オーナー向け提案資料を改善し、自社に任せるメリットを明確に伝える)
    ・オーナー向け通信( ニュースレター)の定期配布(既存オーナーや潜在顧客に役立つ情報を提供し、信頼関係を構築する)
    ・SNSでの情報発信強化(管理実績や成功事例をSNSで発信し、認知度を高める)
     同様に、評価体制であれば「新規管理獲得件数に応じた報奨の導入」や「定期的な目標振り返りミーティングの実施」、営業エリアであれば「重点エリアでのセミナー開催」や「地域のオーナー会への参加」など、各項目ごとに具体的なアクションプランを洗い出していきます。

  • 行動計画に落とし込み、実行へつなげる

     こうしてマンダラチャートによって、目標達成のための道筋がおおまかに整理されました。しかし、ここからが本番です。抽出した施策を実際の行動に移すために、アクションプラン(行動計画)を作成しましょう。各施策について「いつからいつまでに」「誰が」実行するのかを決め、ガントチャートなどスケジュール表に落とし込んでいきます。担当者を割り振り、達成時期やK P Iを設定し、定期的に進捗をチェックする仕組みを作ることが重要です。せっかくマンダラチャートで洗い出したアイデアも、実行に移さなければ意味がありません。計画と実践を社員全員で共有し、継続的に改善を図りながら進めることで、3年後の管理戸数1 0 0 0 戸という目標に向かって着実に前進できるでしょう。

    プロジェクトやタスクのスケジュールを視覚的に管理するための工程表。

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