売買仲介営業

月刊不動産2019年5月号掲載

KPIの見える化で稼げるビジネスモデルを確立させる

株式会社船井総合研究所 小寺 伸幸(不動産グループマネージャー シニア経営コンサルタント)


Q

ここ数年、業績が横ばいで伸び悩んでいます。持続的に業績を上げ続けるポイントがあれば教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 回答

     業績が伸び悩んでいる会社の特徴は、①人の採用・育成・定着に苦戦している、②集客に苦戦している、③営業に苦戦しているなど、いくつか特徴はありますが、まずは売買仲介業をビジネスモデル化することが大切だと思います。ビジネスモデル化させて業績管理できるようになると上記の課題を概ね解決できます。

  • 1. 目標KPIの設定

     ビジネスモデルといえば、よく「稼げる仕組み」という意味で使われますが、ここでは、もう少し一般化して「ビジネスの仕組み」と定義します。ビジネスを仕組み化させるにはどうすればいいのか、その1つの解は業績を上げるために押さえるべき数字を管理することが重要になります。それが「KPI」です。
     KPIとは「key performance indicator」の略で、組織やチームで設定した最終的な目標を達成するための過程を計測・評価する中間指標のことです。よく「重要業績評価指標」や「主要業績評価指標」「重要達成度指標」などといわれています。
     このKPIを部門別、個人別に月次で数値管理し、定期的に目標数字とのギャップを確認しながら課題発見、課題改善に向けてPDCA(図表1)のサイクルで迅速に営業活動を行っていくことが重要です。
     売買仲介業のKPIを図表2に記載いたします。図表2は年間の手数料売上を目標1億円とした場合の月間KPI目標の数字になります。
     もちろん自社の商圏における平均の手数料や反響平均単価は多少差があるため、参考程度にとらえていただきたいと思います。多くの会社では、目標の手数料売上や売買契約件数を設定していると思います。そこで、目標契約件数を達成するために逆算して月間に新規面談数がどれだけ必要なのか、集客の媒体別にどれだけ新規案内の誘導をしなければいけないかを数字で設定することが大事です。

  • 2. KPIを月次で進捗管理しながら自社の課題を改善し続けることが大切

     目標の各KPIを設定し、部門、個人のKPIを予実(予定と実績)で月次で進捗管理することが重要です。部門と個人のKPIを予実で管理できる帳票を作成して、数値を見える化することをお勧めします。KPIの予実管理は、営業会議などで常に確認する癖を付けることも大切です。次に、目標KPIからのマイナスギャップがあれば、どのように改善させるかが重要です。部門に問題があれば、部門のマーケティングフローを見直し、場合によっては改善を図るための営業資料を作成し、そして活用する、また活用マニュアル化などが必要になってくることもあります。一方、個人のみの課題の場合には、上長や先輩社員と営業研修を定期的に行うことで改善を図ります。

  • 3. なぜ、手間の要するKPIの数字を進捗管理する必要があるのか?

     今後、労働力人口が減少していく中で持続的に業績を上げ続けていくためには、採用した社員を早期に育成し、定着させることがとても重要になってきます。また不動産業にかかわらず属人営業を軽減し、数字で経営をはかることは今後ますます重要になっていくでしょう。特に多店舗展開されている会社においては、経営幹部の目が行き届かないことが多くあると思います。この機会に、業態にあわせてKPI管理を実施して、数字でこれまで以上に順調な経営ができるような環境づくりを整えていただくことが重要なポイントになるでしょう。

今回のポイント

●稼げるビジネスの仕組みを構築する1つとして目標KPIを設定し、予実管理を実施する。
●KPI指標を管理する目的を社員に共有して、KPI管理が徹底できる環境づくりを行う。
●事業経営計画には目標KPIを入れて、月次で予実管理できる環境をつくる。
●KPIの指標が社内において共通言語となるまで浸透させる。
●目標KPIからのマイナスギャップがある場合は、しっかり改善に向かうようPDCAを回す。

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