不動産業者のためのコンプライアンス

 第9回   コンプライアンスと危機管理経営<その8>

今回は、捜査機関等への対処についてお話しします。

●捜査機関等への対処

ここで大切なことは以下3点への対応を把握することです。

①刑事処分を受けるおそれのある事案について社内調査すること
まず、コンプライアンス違反を起こした企業自体やその役員・社員等は刑事責任を問われるおそれがあります。例えば、コンプライアンス違反が意図的な不正行為の場合には、刑法をはじめ各種規制法規違反として取締りや捜査の対象となる可能性があります。コンプライアンス違反が重大ミス(重過失)の場合には、業務上過失罪などに問われる可能性があります。

コンプライアンス違反は、企業そのもののブランド価値や企業が提供する製品・サービスのブランド価値を低下させる信用失墜行為ともいえるものです。したがって、コンプライアンス違反が発生した企業としては、直ちに、どのような違反内容であるのかについて自ら社内調査を開始しなければなりません。

社内調査にあたっては、証拠を保全しておくことも大切です。この際注意しておかなければならないのは、個人のプライバシーに十分配意するという点と、くれぐれも捜査の妨害とならないようにするという点です。社内調査の客観性、公平性が保たれないような場合には、第三者委員会を設置して、部外の有識者による調査に任せる方法もあります。

②捜査に全面協力すること
企業のコンプライアンス違反は、企業が加害者の立場にある場合と被害者となる場合も考えられます。企業が被害者の場合であっても、企業不祥事と判断される場合もありますから注意が必要です。例えば、悪質クレーマー事案は、職業的クレーマーの場合は別としても、その対応いかんによっては、企業の落ち度を問われるおそれもあります。また、役員・社員等を対象として脅迫・恐喝による不正融資、不正利益供与、威力業務妨害、インターネットによる誹謗中傷など企業側が被害者となるケースでは、犯行自体は、社外の者によるのですが、犯行のきっかけとなった事実関係の中に、企業側にも不手際があったのではないかなど問われるおそれがあります。しかも、役員社員等が被害を受けることにより業務遂行に重大な支障を来す事態となった場合には、企業の内部統制システムが脆弱(ぜいじゃく)であったのではないかと言われかねません。

いずれにせよ、こうした場合には捜査対象となるおそれが出てきますが、捜査に積極的に協力するという姿勢で対応し、くれぐれも証拠隠滅や「誤って廃棄した」などということがないようにしなければなりません。

そのため、緊急記者会見等の場で、捜査へ全面協力する姿勢を内外に表明することが肝要です。

なお、コンプライアンス違反に関係した企業が複数ある場合には、関係企業の事案対処に関する姿勢、見解、主張が重要ファクターとなってきます。過去のケースでも、各企業の対応の相違が明らかになると、捜査機関等としては、証拠保全のために捜索差押えを行う事例があります。

その状況が報道されることにより、さらなるブランド価値の低下のおそれも出てきます。

③関係役員・社員等の捜査機関等への対応を把握すること
役員・社員等に対する事情聴取が行われるケースでは、問疑されているのが、役員・社員等の個人のみか、企業自体も法人として問疑されているのかを見極めることも大切です。

また、捜査機関等で話した内容と、社内調査の内容が食い違う場合には、なぜ食い違いが生じたのか、その解明に努めるべきでしょう。

企業がコンプライアンス違反を起こした場合、おおむね以下の諸点が重要です。

*違反行為の悪質性(計画的な違反行為、組織的な違反行為、故意に放置した違反、
 隠ぺい工作、違反行為の期間など)
*コンプライアンス違反事案が与える社会への影響度
 (将来への模倣性、製品・サービスの信頼度、業界団体への影響など)
*被害(被害者)の規模(人数)や生命・身体への影響
*被害回復の程度(後遺症、損害賠償、原状回復など)

こうした点は、その後、企業として改善策を講じる上で大変に重要になる事項です。

捜査機関等との関係では、本部か所轄か、どの部門が担当するのかを決めておくことも、捜査機関等の取り組み姿勢や事案処理の方向性について予測がつくこともあり、社内措置を適切に行うことにつながります。

次回は、監督官庁への対処についてお話ししましょう。

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