不動産業者のためのコンプライアンス

 第5回   コンプライアンスと危機管理経営<その4>

今回は、コンプライアンス違反に対する5 つの制裁の行政制裁についてお話しします。

【2】行政的制裁

2つ目は、行政的制裁、すなわち国または地方自治体(行政機関)による各種処分の追及という形で制裁を科すものです。
行政的制裁は、不正行為や重大ミスを起こした企業自体または企業の役員・社員等に対する制裁で将来の抑止効果をも目的として監督官庁が行政上の処分を科すものです。
なお、ここでは制裁そのものに加えて、必ずしも制裁とはいえないまでも一定の制裁効果をもたらす行政機関の行為についても、お話ししましょう。

(1) 許認可等の取消し、業務停止命令等
その1つは、許認可等の取消し、業務停止命令等です。
許認可企業がその業務に関して不正行為または重大ミスを起こした場合、当該業務を行う許認可等を取り消され、業務の一部または全部の停止を命ぜられ、また公共事業入札への参加指名停止処分を受けるものです。
こうした行政処分によって企業に経済的損失が発生するのは必至です。

(2) 金銭的制裁
その2つは、金銭的制裁です。これには2つあります。

ア 過料
過料は、不正行為や重大ミスの原因となった行為自体は必ずしも反社会的なものではなく、また直接行政目的を侵害する行為という観点で科される制裁ではありません。
むしろ、不出頭に対する過料(民事訴訟法第192条)や条例違反に対する過料(地方自治法第14条③)など主として行政上の秩序を維持するために科されるものや、国税滞納処分として強制的に徴収する過料など主として行政目的を遂行するために科されるものなどです。

イ 課徴金
課徴金は、企業が不正に得た利益を監督官庁が収奪する形で制裁を科すとともに将来の違反の抑止を図ることを目的とするものです。
談合、カルテル等に対して公正取引委員会が科すもの、インサイダー取引に対して証券等監視委員会が科すものなどがあります。

(3) 企業名の公表
その3つは、企業名の公表です。これは、直接的には行政的制裁とはいえませんが、行政機関の行為の結果として制裁的効果をもたらすおそれのあるものと考えることができます。
これには3つほどあります。

ア 法令・条例上の公表
法令上の公表については、まず国レベルにおいて、例えば2009 年の消費者庁設置以来、消費者保護のため重大事故等の原因となった製品名等の公表、企業名の公表が行われており、これも一種の制裁と考えていく必要があります。
また、地方自治体レベルでも、例えば暴力団排除条例には、暴力団をはじめとする反社会的勢力に利益供与した事業者が公安委員会の説明要求、資料提出命令を拒否し、是正勧告に従わない場合に事業者名を公表するなどの規定が盛り込まれています。

report イ 調査報告書の公表
監督官庁が、発生した事件、事故等の重大性から、事故調査委員会、事故防止対策委員会等を設置して、後日、報告書を取りまとめ公表することがあります。 公表それ自体は、制裁というわけではありませんが、公表の結果として、重大事件、重大事故等を起こした企業の名前やコンプライアンス違反の企業責任、企業体質等が明らかとなり、その企業に対する社会的評価からブランド価値が低下するなどの影響が出るおそれがあり、一種の制裁といえなくもありません。



ウ 法令改正等
許認可行政や行政指導の隙間に生じた重大事件や重大事故等に対し、再発防止を目的に新たな“ 安全・安心” 規制をかけるため既存の法令(法律・政令・規則)改正や新たな法律を成立(国会承認の下)させることも多々あります。
「この法令(条文)は、○○事件(事故)をきっかけに改正された」「新設された」などと後世に語り継がれ、不正行為や重大ミスを起こした企業にマイナスイメージがつきまとうおそれがあります。一種の制裁行為といえなくもありません。

次回は、民事的制裁についてお話ししましょう。

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