不動産業者のためのコンプライアンス

 第3回   コンプライアンスと危機管理経営<その2>

前回は危機管理経営戦略のお話をしました。今回は企業にとって起こりえるコンプライアンス違反の4 つの類型を具体的にどうやって起こるのかを述べさせて頂きます。

2 コンプライアンス違反の4つの類型

では、企業にとって身近に起こりうるコンプライアンス違反は具体的にどのような姿となって表れるのでしょうか。

私は、社会・経済的観点(政権交代等政治体制の変化、取引ルール・法制度の変更等政治・政策的観点を除く)から、コンプライアンス違反を4つに分類したいと思います。

すなわち、それは、重大事件、重大事故、自然災害及び広域感染症の4つです。

【1】重大事件

重大事件には、さらに要因別に次の3つの分類が考えられます。

(1) 企業内の不正行為から発生する重大事件
1つ目は、脱税、業務上横領・背任、粉飾決算・不正経理、インサイダー取引、談合・カルテル、個人情報や営業秘密の紛失・漏洩、環境汚染・土壌汚染等の公害、偽装表示、欠陥物件の賃貸・販売、セクハラ・パワハラ等人権侵害など、主として企業内部における不正行為によって発生する重大事件です。

(2) 企業外の不正行為から発生する重大事件
2つ目は、知的財産権侵害、不正アクセス、コンピュータウイルス感染、反社会的勢力への不正利益供与、悪質クレーム、爆破予告、業員への殺傷等攻撃事案、毒物・異物混入、従ガソリン・灯油散布等の放火、脅迫電話、インターネット上の誹謗・中傷など、主として企業内要因によって誘発され企業外要因(意図的な企業攻撃や取引先等の企業不祥事の影響等を含む)によって発生する重大事件です。
一見すると、企業は被害者の立場ですが、その実、コンプライアンス違反が誘因となっているおそれもある事案です。

(3) その他の重大事件
3つ目は、“重大事件”と称されながらも、政治・宗教問題、男女関係、訴訟事案、創業家の相続問題等のいわゆる企業経営スキャンダル、経営トップを含む経営陣の突然死や急病による辞任など、不正行為や重過失の範疇の枠外にある事案です。
ただし、これらの事案もケースによっては、企業倫理が問われるような重大事件に発展するおそれもあります。

【2】重大事故

重大事故 重大事故とは、事業所・生産拠点・高層ビル・地下街等の失火、ガス爆発、エレベーター・回転ドア等事故、落下物事故、脱線事故、管理物件内の転倒事故、レジャー施設内事故、IT システム障害、労災事故、従業員による重大交通死亡事故、原子力事故・放射能汚染、その他施設機器の故障事故など、主として企業内部のミス(過失)または不可抗力によって発生する事案のことです。

ミスの重大性によって法令違反が問われ、また不可抗力とみられる場合であっても、企業の管理責任について「人災」(コンプライアンス違反)として追及され企業倫理の問題となるおそれも出てくる事案です。

【3】自然災害

自然災害 自然災害とは、地震、津波、噴火、洪水、台風、土砂崩れ、集中豪雨、落雷、竜巻・突風など、異常気象等に起因する災害のことです。

自然災害については、コンプライアンス違反とは無関係の事象であるかのような印象をもたれるかもしれません。しかし、例えば首都直下型地震や南海トラフを震源域とする巨大地震の危険性について広く公表される中で、企業が仮に震災対策への準備をしないままに巨大地震が発生し一般顧客や従業員が死傷した場合には「人災」とのそしりを免れないでしょう。なぜなら、これは企業の安全対策上の責任や安全配慮義務違反(法令違反)のおそれが出てくるからです。また、国や自治体が定めた帰宅困難者対策のガイドラインが定められる中、これを遵守しない企業についても、少なくとも企業倫理にもとる行為としてコンプライアンス違反に問われかねません。

【4】広域感染症

広域感染症 広域感染症とは、新型インフルエンザ、SARS(重症急性呼吸器症候群)、エボラウイルスなど、国内外に広域かつ甚大な被害をもたらすおそれのある感染症のことです。

広域感染症についても、万一発生すれば、企業活動をはじめ社会全体に甚大な被害をもたらすことが予測される中、企業がその対策をおろそかにしていれば、自然災害のケースと同様に「人災」として非難されかねません。その意味で、これもコンプライアンスの問題としてとらえることができます。

では、こうした4つの類型のコンプライアンス違反が万一発生したときには、企業にはどのような制裁が待ち構えているのでしょうか。 次回は、コンプライアンス違反に対する5つの制裁についてお話ししましょう。

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