不動産業者のためのコンプライアンス

 最終回   コンプライアンスと危機管理経営

今回で最終回となりますが、最後は、コンプライアンス違反への対処の重点と総合戦略の確立についてお話しします。

(2) 4つのコンプライアンス違反への対処重点

①コンプライアンス違反の発生防止
当然のことながら、コンプライアンス違反は発生させないことが“最善の策”であり、企業はそのための事前対策の立案・実行に最大限の努力をすべきです。
特に、重大事件や重大事故の発生防止に対処の重点が置かれるべきです。
したがって、これに違反すれば、もちろん、コンプライアンスの問題が生じます。

②発生した事態の被害最小化
しかし、発生防止が不可能な自然災害等の事案に対しては、何ら準備のないままに発生した場合その被害が甚大となるため、これを最小化(「減災」)するという“次善の策”に重点を置いた事前対策を準備する必要があります。この意味で事前対策は大変重要です。
すなわち、自然災害や広域感染症等は、個々の企業がいかに努力しても、その発生防止は不可能です。しかも、これらのリスク・危機は、一旦発生すると、甚大な被害をもたらすものであり、事業継続の観点から企業の最優先課題として取り組む必要があります(事業継続計画=BCP の策定)。
ところが、政府の発表によって、企業に甚大な被害発生が予測されているにもかかわらず、その対処をおろそかにしたり、放置した責任はどうでしょう。特に、政府・自治体からは、耐震強化・補強措置、避難誘導措置、非常食等の備蓄措置などが要請されている中で、こうした措置を行わない企業については、コンプライアンス違反のそしりを免れないでしょう。
つまり、ここでもコンプライアンス違反に問われるおそれがあるのです。

【6】 総合戦略の確立

企業にとって、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」は重要な経営資源ですが、コンプライアンス違反が発生した場合に、どのような影響がもたらされるおそれがあるのでしょうか。私は、次の4つだと考えます。

① 役員、社員等や株主、顧客、取引先等のステークホルダーの生命、身体
 (「ヒト」)
② 営業・生産拠点をはじめ各種事業所や施設、装備品、在庫、保有不動産等の
  物的資産(「モノ」)
③ 企業活動の円滑化・効率化・収益性向上等のために蓄積・構築されたノウハウ、
  データ、技術、営業力、ITシステム等(「情報」)
④ 企業が保有・支配する株式、債券、キャッシュストック、ゴールド・プラチナ・
  シルバー等をはじめとする金融資産(「カネ」)


これら経営資源に対する被害・損失は、企業のブランド価値の低下や事業活動の低迷を招き、ひいては事業存続の危機をもたらすおそれさえあるのです。

取引先等の利害関係者が企業に期待することは、リスク・危機に遭遇したとしても、企業の重要業務が中断しないこと、また万一中断しても速やかに事業を再開できることです。つまり、重要業務が中断した結果、企業自体が被る業績悪化、顧客の他社への流出、マーケットシェアの低下、企業ブランド価値の低下のみならず、取引先等の連鎖的な供給中断・供給不足といった経済的影響など間接的被害を招きます。このようなことのないように、あらかじめ対応策を定め、これを適切に遵守するコンプライアンス経営戦略を構築することが求められているのです。“安心・安全”の提供が企業の社会的責任となる時代の到来です。

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