不動産業者のためのコンプライアンス

 第16回   コンプライアンスと危機管理経営

今回は、コンプライアンス違反への対処の3つの段階についてお話しします。

【5】 コンプライアンス違反への対処の3つの段階

(1)循環型危機管理経営手法の活用
企業がコンプライアンス違反という事態に陥らないためには、どうすればよいのでしょうか。
私は、米国で広く知られている“循環型危機管理手法”の活用を推奨したいと思います。
“循環型”とは、具体的に危機管理手法を3つの段階のサイクルの中でとらえるという考え方です。コンプライアンス違反への対処についても、こうした考え方が参考になります。
その3つの段階とはおおむね次のようなものです。

A 平常時の事前対策の立案・実施(およびコンプライアンス違反に対処する緊急時の応急対策や収束時に実行する事後対策の準備)の段階
まず、第1段階は、平常時の段階です。
ここでは(ⅰ)コンプライアンス違反の発生を未然に防止するための各種措置(例えば、企業不祥事防止対策)や(ⅱ)コンプライアンス違反の発生した場合の影響を最小化するための措置(例えば、対処マニュアルの整備)などの事前対策を立案 ・ 実施する段階です。言うまでもなく、コンプライアンス違反は起こさないことが最善の策なのです。

ここで思い起こされるのが、「曲突(きょくとつ)薪(たきぎ)を徒(うつ)す」ということわざです。
危機管理に関して、事前対策の重要性について説いた諺ですので、お調べいただきたいと思います。
と同時に、この段階は、万一コンプライアンス違反が発生した場合の応急対策及びその収束後の事後対策(再発防止措置や復旧措置など)を事前に準備しておく段階でもあります。

B 緊急時の応急対策実施の段階
第2段階は、実際にコンプライアンス違反が発生した段階です。
事前対策を徹底し努力していても、コンプライアンス違反が発生した場合に、その応急対策を実施するのが第2段階です。
すでにコンプライアンス違反が起こっているため、事前に検討・準備しておいた応急対策上の対処方針、マニュアル等に従い、直ちに緊急対処することによって具体的影響を最小化する段階です。

循環型危機管理経営 C 収束時の事後対策実施の段階
第3段階は、こうしたコンプライアンス違反に適切に対処し収束した段階です。
この段階は、(ⅰ)例えば自然災害への対処のケースにおいては、事前に検討・準備しておいた復旧措置を通じて事業活動を早期に再開・継続する事後対策の実行段階であり、他方(ⅱ)例えば法令違反の重大事件への対処のケースにおいては、事案の反省教訓に基づいて再発防止措置を検討・実行する事後対策の段階です。


以上のように、コンプライアンス違反への対処は、平常時の事前対策から、発生してしまった緊急時の応急対処や収束時の復旧対策または再発防止対策を経て、新たな平常時の段階に進むことになるのです。

このようにして、コンプライアンス違反への対処は、過去の反省・教訓を踏まえ、新たに発展して循環するのです。これが“循環型危機管理経営手法”をコンプライアンス違反の対策に活用したものです。
これを簡単に図示すると、右図のようになります。

次回は、コンプライアンス違反への対処の重点と総合戦略の確立についてご説明しましょう。

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