不動産業者のためのコンプライアンス

 第14回   コンプライアンスと危機管理経営

今回は、(5)社会的評価への対処についてお話しします。

【5】 社会的評価への対処

コンプライアンス違反を起こした企業が考慮しなければならない措置の5つ目は、社会的評価への対処です。
ここで大切なことは、①マスメディアによる報道の影響を考えること、②一般消費者等の消費行動への対応を考えること、③業界団体等による制裁への対応を考えること、および、④風評被害の危険性への対策を考えることの4点です。

①報道の影響を考えること
コンプライアンス違反に対する社会的評価は、様々な手段により下されますが、“伝播性の速さ”に注目する必要があります。新聞、テレビ、ラジオ、インターネットなどマスメディアの報道はその典型です。
マスメディアは、消費者目線で事実関係について公平・中立的な立場から報道し、また解説します。その報道効果は絶大なものがあり、企業自体やその提供する商品やサービスのブランド価値の低下を招きかねないのです。また、こうした報道を受けて、企業がどのように対処するかによって、さらなる報道が続き、場合によっては、より大きな企業イメージの失墜を招くことにもなります。
この意味で、緊急時のマスメディアへの対応(これを「クライシス・コミュニケーション」と呼びます)は、企業にとって極めて重要な課題です。

ア. 危機広報(クライシス・コミュニケーション)の実施
まず、マスメディアによる報道の程度は、コンプライアンス違反の内容(重大性、悪質性、組織性、社会的影響等)によって異なりますが、いかに事実に即して公平・中立に評価を行ってもらうかに注力する必要があります。
また、既述したブランド価値の低下を最小限にとどめるためにも、コンプライアンス違反の事実の情報開示にあたっては、企業の真摯な姿勢を示すことが肝心です。

イ. 緊急記者会見への対応
危機広報は、具体的には緊急記者会見という形で対応していくことが最も有効な方法です。
しかし、時間的制約の中で、その準備をすることは大変なエネルギーを要します。
記者会見要領は、会見場(自社会議室、ホテル会場、記者クラブ等)の確保、必要資機材(PC用電源、照明器具等、マイク(複数)、机・イス、モニター・スクリーン、自社記録用機器の準備、記者・カメラマンの取材位置の区別、駐車場の指定など、いわば、ハード面の準備が必要です。

同時に、言わばソフト面の対策として、会見でコンプライアンス違反に関する事実関係や対策等を説明する会見者(代表取締役など最高責任者)や司会役(広報担当者等)の選定、会見時間、同席者(担当役員、弁護士等)の有無、服装(スーツ着用、目立たないネクタイ等)の指定などを検討するとともに、会見時にマスメディアに配布する“スタンス・ペーパー”(当該コンプライアンス違反の事実関係に対する企業の基本姿勢を示す文書)の作成、会見時の質疑応答(事実関係の調査継続の有無、原因究明、被害者への対応措置・被害回復、再発防止策、関係者の処分等を含む)に備えるための“想定問答”の作成、受付・警備員・案内係等の行動要領での作成・指示などを準備することも重要です。

また、緊急記者会見の説明内容についても、基本的な留意事項があります。それは、コンプライアンス違反の発生について、「社会(世間)」に対しお詫びをするという考え方で会見に臨まなければならないという点です。会見に出席するマスメディアの質問の奥には、「社会(世間)」が控えていることを忘れてはなりません。会見では、自社の従業員の不正行為または自社の製品・サービスの欠陥などによって消費者、関係者に対し、多大な迷惑、心配をかけたことのお詫びや心からの反省の姿勢が重要なのです。つまり、世間は、コンプライアンス違反企業に対し社会的責任が果たされることを求めているのであって、こうした姿勢で対応すれば、直ちに法的責任を問う追及の場となることは通常はありません。したがって、緊急記者会見の内容が、将来の訟訴を恐れて“言い訳”に終始したりすると、かえって企業のマイナスイメージが先行して致命的結果をもたらす恐れもあります。

他方、不幸にしてコンプライアンス違反は発生したものの、この会見を通じて、再発防止に向けて“安全・安心”にかかる問題に真摯に取り組む企業であることを理解してもらうことも大切です。

記者会見 問題はあったものの、“安全・安心”を重視する企業であることをアピールできるチャンスであるという発想の転換も必要です。すなわち、会社を守るための安全対策ではなく消費者の生命、身体、財産を守るための“安全・安心”戦略が求められるということをよく噛みしめていただきたいと思います。


ウ. 社告等の取扱い
危機広報(クライシス・コミュニケーション)は、社告等の形で行われることが通例です。
これは、緊急記者会見の様子が報道される、されないにかかわらず、広く一般国民に、事案発生のお詫びと安全確保のためのリコール(商品回収、修理等)等の措置などについて、お知らせするという趣旨です。
具体的手段としては、新聞、TV、ラジオ、ホームページ、IR( 上場企業の場合) 等を活用したり、お詫び表明のレターを発出する方法などがあります。

次回は、(5)社会的評価への対処②一般消費者・主要顧客・取引先等への対応を考えることからお話ししましょう。

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