不動産業者のためのコンプライアンス

 第12回   コンプライアンスと危機管理経営

今回は、企業内対策についてお話します。

①直ちに原因究明に当たること

ア. 調査委員会の設置
弁護士や危機管理の専門家など部外の有識者を含め、公平・中立の立場から、発生したコンプライアンス違反についての原因究明を早急に行うための委員会を設置する必要があります。
こうした委員会は、部外者だけで構成される“第三者委員会”という方式と、社内の代表者(例えば、社長や担当役員)を含めた“社内調査委員会”という方式があります。前者は、より独立性の高い調査が行われるでしょうし、後者は専門性の高い原因究明が可能でしょう。

イ. 再発防止委員会の設置
再発防止は極めて重要な課題ですが、企業として徹底した防止策を構築するためには企業の司令塔となる再発防止委員会の設置が必須です。
ただし、この委員会も、前記アで述べたように2 つの方式で設置することが可能です。
原因究明と再発防止を一体のものと考えれば、調査委員会と再発防止委員会を合体させ設置することも一つの方法です。

ウ. 原因究明の2つのアプローチ
原因究明に当たっては、当面の原因と本来的な原因とを分けて考えるのが良いでしょう。
そもそもコンプライアンス違反事案が発生する背景には、企業内の特定の部署でコンプライアンス違反が起こる原因が存在したという点と、そうした違反を許す企業システムの不備、企業文化の欠陥、経営方針の不徹底などが存在している可能性もあるのです。したがって、こうした2 つの側面を検証することが重要です。

前者は下記の②アの課題で、後者は下記の②イの課題です。

②再発防止策を実行すること

ア. 製品・サービスやシステム等の改善
特定部署でのコンプライアンス違反の発生原因から、当面考えられる再発防止策を直ちに実行するとともに、少し時間がかかりますが、調査委員会による総合的な原因究明や再発防止委員会の改善策・再発防止策について検討していくことが大切です。こうした中で、下記イの課題も出てくるのです。

イ. 企業体質の改善と危機管理経営の導入
コンプライアンス違反を起こした企業の体質改善を図ることは並大抵のことではありません。
経営トップをはじめ全従業員の意識改革も必要ですし、新たな制度・システムの導入、組織の新設、人事刷新、新たな予算措置なども必須でしょう。

意識改革は、短期的な施策だけで実現できるものではありません。環境整備や危機管理経営の導入、そしてそのモニタリングの徹底など地道な施策を長期にわたって実行する決意とその実践によってはじめて、企業体質の改善はなし遂げられるのです。最近のマスコミ報道事案を見ても、社会的に認められた企業が、コンプライアンス違反を繰り返す原因は、この企業体質の改善と危機管理経営が徹底されていなかったことから起こっていると言わざるを得ません。

企業の体質改善や危機管理経営の徹底のための“魔法の杖”はありませんが、少なくとも意識改革をするための手がかりとして、以下で、企業内対策②イのうち、コンプライアンス軸のズレについてお話します。

コンプライアンス軸のズレ “コンプライアンス軸のズレ”というのは、(i)一般社会との常識のズレ、(ii)業界他社との認識のズレ、(iii)社内の上司・部下の間の意識のズレの3つです。
これを図示すると右のようになります。
こうしたズレを排除し、個々の役員・従業員等の意識改革が戦略的に実行されることが大切であると考えます。

次回は、企業内対策について、引き続きお話しましょう。

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