不動産業者のためのコンプライアンス

 第11回   コンプライアンスと危機管理経営<その10>

今回は、(3)被害者・株主等への対処についてお話しします。

【3】 被害者・株主等への対処

ここで大切なことは、①被害(損害)の程度を把握すること、②対策の優先度を決定すること、および③被害拡大防止策を直ちに実行することの3点です。

①被害(損害)の程度を把握すること
ア. 被害者等の人的被害算定
まず、以下のように、被害者の特定および具体的被害状況の把握が大切です。ただし、これらは重要な個人情報ですから、その取扱いには十分注意しなければなりません。
*氏名、生年月日(年齢)、国籍(外国人の場合)、男女の別
*職業(学生の場合には、学校名・学部名を含む)
*連絡先(親族等の連絡先を含む)
*入院の有無(病院名を含む)
*被害程度(死亡、重篤、重軽傷など)・被害回復までの期間
*被害時の立場(一般通行人、施設来訪者・利用者を含む顧客、自社従業員などの別)
なお、被害者が子供(幼児)、高齢者、妊婦、身障者、外国人等の場合には、被害事案の与える社会的影響度は一層高まるため、こうした確認が必要となります。

イ. 被害者等の物的被害算定
次に、把握しておかなければならないのは、例えば、以下の物的損害の詳細です。

  • 被害にあった施設・設備の名称、機種、型番と被害程度
  • 滅失した装備資機材等とその被害程度
  • 原状回復、安全回復のための改善コスト
  • 被害のあったIT システムの修復コスト

ウ. 被害者への補償上の損失算定
さらに、過去の一般的な補償事例を参考にして、被害者のための補償額(損害賠償及び慰謝料)をある程度想定しておくことは重要です。
ただし、実際の被害額の算定には、専門家の指導を受ける必要があるでしょう。

エ. 企業の営業損失・株式市場の評価算定
加えて、コンプライアンス違反事案の発生により、企業のブランド価値や商品・サービスのブランド価値が低下し、顧客離れによる営業損失が発生することがあります。違反企業の株価への影響も出てくるおそれもあります。 また、株主が被害者として違反企業の個々の取締役・監査役に対して損害賠償請求を行う場合(株主代表訴訟)もあります。 企業自体や個々の役員は、こうした状況をも注視していかなければなりません。

オ. 広報・IR費用
最後に、企業が被害者や一般消費者に対し、お詫びのために社告を主要新聞に掲載したり、テレビでCM 放送をする場合があります。また、お客様に対して、お詫びのためのレターを送付する場合もあります。
こうした場合の諸費用も、企業にとっては、被害者対応として必要不可欠なものであることを自覚すべきでしょう。

②対策の優先度を決定すること
ア. 被害者(関係者)への対処を最優先とすること
企業の安全対策が不十分なために被害が発生した場合は、特に被害者に対する迅速な面談とお詫び、精神的サポート、補償などが重要です。
被害者は、一般通行人、事業所来訪者、管理施設利用者、テナント従業員(顧客)、自社従業員など様々です。

イ. 株主に対する臨時IRの実施
対外的には、株主をはじめ、金融機関、取引先、顧客などのステークホルダーに対する説明責任を果たすことが重要です。また、社内的にも、一部の者にとどまらず、役員・社員等に対してきちんとした説明が必要でしょう。

③被害拡大防止策を直ちに実行すること
ア. 製品に欠陥が生じている場合
リコール、店頭回収、販売中止、委託工場との契約解除などを実施します。

イ. 管理区域内に危険が生じている場合
現場危険物の排除、立入禁止措置、安全装置の設置などを実施します。

ウ. 危機広報の実施とコールセンターの設置・増強
製品処理体制の強化、製品購入顧客への謝罪方法・内容等の確認、施設利用者の制限などを実施します。

次回は、企業内対策について、お話ししましょう。

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