不動産業者のためのコンプライアンス

 第10回   コンプライアンスと危機管理経営<その9>

今回は、(2)監督官庁への対処についてお話しします。

【2】 監督官庁への対処

ここで大切なことは、①関係機関等へ迅速な報告を行うこと、②再発防止策を構築すること、および③事業継続方策を検討・決定することの3点です。

①関係機関等へ迅速な報告を行うこと
コンプライアンス違反を起こした企業は、行政処分を受けることがあります。これは、許認可を行う監督官庁や公共工事の発注元としての官庁(自治体を含む)から課せられる処分です。
具体的な監督官庁としては、コンプライアンス違反の態様や企業の業務の特性により様々ですが、それぞれ行政事務を所掌する許認可官庁(自治体を含む)となります。この中には、消防署、保健所、労働基準監督署なども含まれます。上場企業の場合には、官庁ではありませんが、証券取引所への報告・連絡も必須です。

コンプライアンス違反が発生した企業は、こうした関係機関等に対して、迅速な報告を実施し、真摯に説明する努力をしなければなりません。広報対策などに忙殺され、行政への報告・連絡がおろそかになってしまうケースが散見されますので注意が必要です。 まず、第一報などの形で口頭報告を行ったり、広報文などの関係資料を送付する場合もあるでしょうが、通常、所管官庁からは、期限を定めて正式な報告書の提出を求められます。報告書の提出は1回とは限らず、内容が不十分で再度報告を求められる場合や一定期間経過後に報告書の再提出を求められる場合などもあります。

報告書には
*コンプライアンス違反についてのお詫び・反省
*企業の内部統制システムが機能しなかった点
*違反事実の具体的原因究明
*業務の改善と再発防止策
*関係者に対する社内処分(監督責任を問う処分や体制強化のための人事異動を含む)
*被害者への対応(損害賠償、原状回復、示談等を含む)

など、これまで説明してきたポイントを外さない内容を盛り込むことが大切です。
万が一にも、虚偽の報告を行ってはいけません。“第2のコンプライアンス違反事件”に発展することになりかねません。

②再発防止策を構築すること
監督官庁への報告・連絡の中には、再発防止策を盛り込むべきことはすでに説明したとおりですが、これは必須事項であることを認識しておく必要があります。
再発防止策は原因究明と表裏一体の関係にありますから、コンプライアンス違反の実態解明に基づく再発防止システムの構築や見直しなどについて詳細に述べる必要があります。

再発防止策の構築にあたっては、監督官庁から十分な指導を受けることが必要です。ここで留意すべき点は、コンプライアンス違反事案には、例えば生産工程や営業活動におけるコンプライアンス意識の欠如や見過ごしなどが原因である場合と、そうした現場活動をチェックするための内部統制システムや、そもそも企業のガバナンスが機能しなかったことが原因である場合の二面性があるという点です。

後者については、その再発防止策の構築や見直し(例えば、管理部門の刷新、チェック機能の体制強化など)には一定の時間が必要になってくるでしょう。

③事業継続方策を検討・決定すること
行政処分については、最悪の場合には、企業に事業許認可の取消処分や営業停止処分(法令の範囲内で)が科されることになります。これでは企業としては、持続的な発展は不可能です。

また、是正勧告が出される場合もありますが、この場合、勧告内容を着実に実行しなければなりませんし、是正した状況を報告することが求められる場合もあります。

さらに、金銭的な制裁を課せられることもあります。

一方、企業名を公表されることを前提として、企業のブランド価値の低下や製品・サービスのブランド価値の低下を招くことも考慮に入れておく必要があるでしょう。

どのような処分が下される可能性があるかについては、公開されている関係官庁の過去の処分例を参考にして、あらかじめ自社のケースに当てはめ、予想される処分の内容に応じた業務推進(改善)方策を検討しておくことが大切です。

なお、監督官庁から科せられた行政処分(許認可等の取消し、課徴金、入札参加停止など)に対しては、コンプライアンス違反の重大性と行政処分の重さとの因果関係に不服がある場合には、法的検討を経て、行政訴訟や国家賠償請求などの法的手続を取ることも可能です。

次回は、(3)被害者· 株主等への対処についてお話ししましょう。

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