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設備・構造で新しい資格を創設 ~建築士法等の一部を改正する法律案~

住宅新報社 企画開発室

耐震偽装事件を受け、建築士法等の一部を改正する法律案が平成18年12月13日参議院本会議で全会一致で可決、成立した。法の施行は一部を除いて公布日から2年以内の見込みである。「建築士そのものの能力を向上させることで、建築に対する信頼を回復しようとする」もので、構造設計と設備設計の各分野で新たに認定する一級建築士に、一定規模以上の建物のチェックを義務付けることや、建築士に定期講習を義務付けることなどが盛り込まれている。

はじめに

今回の改正では、建築士の資質・能力の向上、高度な専門能力を有する建築士の育成・活用、また、設計・工事監理業務の適正化、建設工事の施工の適正化等を図り、耐震偽装事件により失われた建築物の安全性及び建築士制度に対する国民の信頼性を回復することを目的としている。

改正の大きな柱は次の5項目である。

① 建築士の資質、能力の向上を図る
② 高度な専門能力を有する建築士による構造設計、設備設計の適正化
③ 設計・工事監理業務の適正化と消費者への情報開示
④ 団体による自立的な監督体制の確立
⑤ 建設工事の施工の適正化(建設業法の改正)

概要

建築士法の一部改正

  • 国土交通大臣はその指定する者に一級建築士の登録の実施に関する事務等を、都道府県知事はその指定する者に二級建築士及び木造建築士の登録又は建築士事務所の登録の実施に関する事務等を行わせることができることとする。

  • 建築士試験の受験資格者を大学等において建築に関する一定の科目を修めて卒業した者とする等その受験資格の見直しを行う。

  • 構造設計一級建築士又は設備設計一級建築士以外の一級建築士は、一定の規模の建築物の構造設計又は設備設計を行った場合においては、構造設計一級建築士又は設備設計一級建築士に当該建築物の構造関係規定又は設備関係規定への適合性の確認を求めなければならないこととする。

  • 建築士事務所に属する建築士等は、一定期間ごとに、国土交通大臣の登録を受けた者が行う講習を受けなければならないこととする。

  • 建築士事務所の開設者が委託を受けた設計又は工事監理の再委託の制限、設計受託契約等を締結しようとするときにおける建築主に対する管理建築士等による重要事項説明の実施等について定める。

  • 築士事務所の開設者に対する指導、建築士事務所の業務に対する苦情の解決等の業務を行う建築士事務所協会及び建築士事務所協会連合会に関する制度を整備する。


建築基準法の一部改正

  • 構造設計一級建築士又は設備設計一級建築士が建築物の構造関係規定又は設備関係規定への適合性を確認した構造設計又は設備設計によるものでない建築物の計画については、建築主事は、建築確認の申請書を受理することができないこととする。


建設業法の一部改正

  • 多数の者が利用する一定の重要な施設等の工事について、一括下請負を全面的に禁止することとする。

  • 資格者証の交付等を受けた監理技術者の配置を要する場合を、重要な民間工事に拡大することとする(現在は公共工事のみ)。

    建設業法の一部改正

建築士制度に対する信頼の回復

近年、構造計算や構造設計、設備設計の業務内容が高度化してきており、一級建築士においては、こうした専門別の業務を理解して、指示し、チェックできるだけの能力が必要となってきている。また、構造及び設備の専門能力を有する一級建築士を育成し、そうした人材を確保することも必要となってきている。

したがって、これからの一級建築士の資格付与は、こうした能力を獲得できる実務経験とその能力を確認するための試験によって厳格に判定することとすべきである。

また、現在、建築士となっている者については、建築士法22条1項で「設計及び工事監理に必要な知識及び技能の維持向上に努めなければならない」とされているものの、昨今発生している事案を踏まえると当該努力義務規定では不十分であり、国民の生命、財産を守るために、必要な能力が維持向上されるよう具体的な措置が講じられる必要がある。

このため、建築士事務所に所属し、業に携わる建築士については、一定期間ごとの講習の受講を義務付けることとし、講習及び受講効果を確認するための修了考査の実施により、資格取得後の新たな建築技術への対応や建築基準法令等の改正への対応等必要な能力の維持向上が図られるよう措置すべきである。

新たに建築士となるものの資質・能力の確保

  • 一級建築士等の受験資格の見直し

    一級建築士試験の受験資格者を大学等において建築に関する一定の科目を修めて卒業したものであって、その卒業後建築に関する実務経験を2年以上有する者とする等、一級建築士試験、 二級建築士試験及び木造建築士試験の受験資格について所要の見直しを行うものとすること。(建築士法14条及び15条関係)

既存の建築士の資質・能力の向上

  • 定期講習の義務付け

    建築士(建築士事務所に属するものに限る)、構造設計一級建築士及び設備設計一級建築士は一定の期間ごとに、国土交通大臣の登録を受けた者が行う講習を受けなければならないものとすること(22条の2)。

    国土交通省は、定期講習義務付けにあたり、受講者数や実施体制を踏まえ、受講義務付け期間を定める方針だが、2~3年に1度程度、建築基準法の重要な改正が行われることや、新技術の開発が数年単位で進んでいることを踏まえ、3年に1度の受講を義務付ける方針である。受講人数については、設計を業として営む人が対象となるため、全国で30~35万人程度とみている。

    期講習では、終了考査を実施し、一定以上の点数に満たない者は不合格とする。不合格者については、「受かるまで受講してもらう」(国土交通省榊正剛住宅局長)としている。

    講習を受けない場合は所属する建築士事務所を通じて注意し、従わない場合は、戒告や業務停止。免許取消しなどの処分を行う。定期講習の実施機関は、建築関係団体や建築の専門学校からの申請を想定している。

    申請にあたっては、設計や監理、工事など建設関係ではない、建設関係企業の支配下にはない、債務超過状況ではない、といったことが条件となる。

    講習の内容や年間の講習回数、修了考査の実施などは、省令で基準を設ける方針である。


高度な専門能力を有する建築士による構造設計の適正化

今日の建築設計においては、専門性が高い構造及び設備の分野に関しては、高度な専門能力を有する者の活用が不可欠となっているとともに、必要十分な能力をもつ建築士が、それぞれの分野の業務の整合性をとりつつ、設計図書として一つにまとめ上げることが必要となっている。構造及び設備の分野について、高度な専門能力を有する建築士が関与し、適切に設計が行われる仕組みが制度化されるべきである。

  • 新たに構造設計一級建築士、設備設計一級建築士の創設

    次のいずれかに該当する一級建築士は、国土交通大臣に対し、構造(設備)設計一級建築士証の交付を申請できるものとすること。

    :一級建築士として5年以上構造(設備)設計の業務に従事した後、国土交通大臣の登録を受けた者(登録講習機関)が行う講習の過程をその申請前1年以内に修了した一級建築士

    :国土交通大臣が構造(設備)設計に関し、上記の一級建築士と同等以上の知識及び技能を有すると認める一級建築士(10条の2関係)

  • 構造設計一級建築士、設備設計一級建築士による構造関係規定への適合性の確認の実施等

    構造設計一級建築士は、高さが20mを超える鉄筋コンクリート造の建築物等、一定の規模の建築物の構造設計を行った場合においては、その構造設計図書に構造設計一級建築士である旨の表示をしなければならないものとすること。

    設備設計一級建築士は、階数が3以上で床面積の合計が5,000m2を超える建築物の設備設計を行った場合においては、その設備設計図書に設備設計一級建築士である旨の表示をしなければならないものとすること(22条の2及び22条の3関係)。

    一級建築士が所定の構造設計を行った場合においては、構造(設備)設計一級建築士に法適合の確認を求めなければならない。


建築分科会は平成18年8月31日に「建築物の安全性の確保のための建築行政のあり方について」の報告をとりまとめた後、社会資本整備審議会答申として大臣に提出した。次に抜粋して紹介する。

建築士制度の沿革

我が国における今日の建築規制は、昭和25(1950)年に建築物の質の確保と向上を図るため、建築物の最低基準を定めてこれを規制する建築基準法と、質の向上を図るためには人材確保が重要との認識に立った建築士法とが車の両輪として機能するよう制定されたことをその端緒としている。

建築士制度は、一定の知識、技能を有する資格者である建築士の自主責任を基本とし、法規を守るべき建築士に一義的に責任を持たせることとして、建築物の設計及び工事監理について業務独占が与えられている。また、建築の計画・意匠に特化している西欧のアーキテクト制度とは異なり、建築物の質の確保と向上を図る観点から、建築に関する広範な技術者を確保、養成するための制度として構成された。

建築士制度の導入によって、戦災復興から高度経済成長期等を通じて、設計・工事監理はもとより、建築工事の指導監督を行う技術者等として相当数の建築士が従事することとなり、この制度は我が国における建築生産の場において建築物の質の確保を果たしてきたといえる。

今日、我が国の経済社会情勢はこれらの時期とは大きく異なり、人口減少・少子高齢社会が現実化して人口減少という大きな転換期に入っており、将来的には建設投資の現象予測もなされている。

こうした状況を踏まえ、建築行政や住宅政策のあり方としても、量の確保から質の向上を目指す方向へ移行し、ストックの有効活用が重要視されるようになってきた。また建築物に要求される性能について耐震や防火といった基本的な安全性はもとより、シックハウス対策やエレベーター事故対策等さまざまな安全対策が求められている。さらに、環境問題、省エネルギー問題への対応やバリアフリー化への対応など、経済社会活動にかかわる諸課題への対応が求められる。

これらの点を踏まえれば、建築生産を支える建築士、特に設計者や工事監理者となる建築士にはこれまで以上に高い能力と質の向上が求められている。

建築士及び建築士事務所の現状

一級建築士の年齢構成

一級建築士及び二級建築士については、昭和26年から登録が開始されており、平成17年度末時点での登録者数は一級建築士が322,248名、二級建築士が692,968名、木造建築士が14,950名となっている。

このうち一級建築士の年齢別登録者数をみると、20歳代は約3,000人、30歳代は約47,000人、40歳代は約66,000人、50歳代は約101,000人、60歳以上が約106,000人であり、平均年齢は56.2歳となっている。

また、平成17年度末時点での建築士事務所の登録数は、一級建築士事務所が92,028事務所(うち個人事務所37,180、法人事務所54,848)、二級建築士事務所が40,419事務所、木造建築士事務所が828事務所、総数133,275事務所となっている。このうち二級建築士事務所は昭和60年の56,699事務所、木造建築士事務所は昭和63年の1,779事務所、総数は平成12年の135,972事務所をピークとして、その後はそれぞれ減少傾向が続いている。

建築士の実務実態

建築士の実務実態をみると、構造設計に従事する者は約4%、設備設計に従事する者は1.1%であり、これらの業務に従事する者の割合が極めて低い状況にある。

また、一級建築士合格者においても、その職務内容別の構成をみると、構造設計を担当している者の占める割合は4~5%(200~300人)程度で推移しており、同様に設計を担当している者の割合は1%強(100人程度)となっている。

建築士事務所に対して行ったアンケート結果では約半数の事務所が専業事務所であり、また所員5人未満の小規模事務所が占めており、零細な実態が明らかとなっている。また、事務所全体でみると約55%の事務所で開設者と管理建築士が同一である。

業務内容としては、約43%の事務所が意匠業務を中心としており、構造設計業務の約45%設備設計業務の約69%が再委託されている。特にこれらの再委託業務については約43%の事務所が再委託の契約を口頭でのみ行っており、また約36%の事務所が依頼主に対して再委託先を提示していない、といった責任関係のあいまいな業務実態が明らかとなっている。

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