法律相談

月刊不動産2017年5月号掲載

重要事項説明(管理会社についての説明)

渡辺 晋(山下・渡辺法律事務所 弁護士)


Q

 マンション売買の仲介を行うには、管理会社の名称や管理委託契約の内容を重要事項として説明しなければならないでしょうか。また、賃貸住宅の仲介では、管理会社の名称は説明すべき重要事項なのでしょうか。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1. 管理会社についての説明事項

     マンションの売買では、管理業務が管理会社に委託されているときは、管理会社の商号・名称と主たる事務所の所在地を説明しなければなりません。管理委託契約の内容についても、その主たる内容をあわせて説明することが望ましいとされています。また、賃貸住宅の仲介では、管理会社の商号・名称と主たる事務所の所在地が説明事項となります。

  • 2. 重要事項説明の考え方

     宅地建物の売買・賃貸は、生活や営業の基盤を形づくる重要な取引です。宅地建物は大きな価値のある財産であり、一般の人々はそれほどたびたび取引に関与することはありません。しかも不動産の状況や権利関係など、取引の前提として理解しておかなくてはならない複雑な事項がたくさんあります。

     そのため宅建業法35条では、宅建業者に対し、売買・賃貸の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、書面(重要事項説明書)を交付したうえで、買主・借主への重要事項の説明をさせなければならない、という義務を課しました。買主・借主が購入や賃借の前に宅地建物とその取引条件に関する重要事項を理解し、十分な情報を得たうえで宅地建物を購入・賃借するかどうかを判断できる仕組みをつくっているわけです。

  • 3. マンション管理会社についての説明

     重要事項として説明すべき事項は、法律と政省令に定められています。マンションの売買や賃貸では、「一棟の建物及びその敷地の管理が委託されているときは、その委託を受けている者の氏名(法人にあつては、その商号又は名称)及び住所(法人にあつては、その主たる事務所の所在地)」が説明事項となります(宅建業法35条1項6号、同法施行規則16条の2第8号)。管理を受託している者(マンション管理会社)が、マンション管理適正化法の登録を受けている者(同法44条)である場合には、重要事項説明書に氏名(法人にあっては、その商号又は名称)とその者の登録番号、及び住所(法人にあっては、その主たる事務所の所在地)を記載し、その旨を説明しなければなりません。また、管理の委託先のほか、管理委託契約の主たる内容もあわせて説明することが望ましいとされています[宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方35条1項6号関係 8 管理が委託されている場合について(規則16条の2第8号関係)]。

  • 4. 賃貸住宅管理会社についての説明

     賃貸住宅の仲介では、管理が管理会社に委託されていれば、「委託を受けている者の氏名(法人にあつては、その商号又は名称)及び住所(法人にあつては、その主たる事務所の所在地)」が説明事項です(宅建業法35条1項14号イ、同法施行規則16条の4の3第12号)。

     ところで、賃貸住宅の管理について、管理業者による適切な管理を実現し、賃借人と賃貸人の利益を保護するために、賃貸住宅管理業者登録規程(国土交通省第998号)および賃貸住宅管理業務処理準則(同第999号)による賃貸住宅管理業者登録制度(以下、「登録制度」という)が創設され、平成23年12月から運用を開始しています。

     平成28年8月には、宅建業法の解釈・運用の考え方が改正され、「アパート等の賃貸においても区分所有建物の場合と同様、重要事項説明書に管理者の氏名、住所及び賃貸住宅管理業者登録規程(平成23年国土交通省告示第998 号) 第5条第1項第2号の登録番号を記載し、その旨説明することとする」とされました。

     なお、登録制度は任意の制度であり、登録をしなくても賃貸住宅の管理業務を営むことができます。賃貸住宅の管理が登録を受けていない管理会社に委託されている場合には、管理者の氏名及び住所を記載し、説明することとなります。ここでいう管理者には、単純な清掃等建物の物理的な維持行為のみを委託されている者は含まれません。

  • 5. 管理会社の社会的役割と宅建業者の業務

     平成25年時点で国全体の住宅ストック総数は6,063万戸であり、その中には、分譲マンション590万戸、賃貸住宅(民間賃貸住宅)1,458万戸が含まれます。1世帯に2.5人が暮らしていると想定すると、分譲マンションで暮らす居住者の数は約1,470万人、賃貸住宅で暮らす居住者の数は約3,650万人となります。いずれもわが国に暮らす人々の居住スタイルとして、極めて大きな割合を占めているわけです。

     分譲マンションや賃貸住宅では、それぞれ8割を超える物件で、管理会社に管理の委託がなされています。宅建業者は、安心して安全に暮らせる住宅の流通、供給に責任をもつ立場にあります。どの管理会社が管理を行っているのかは、購入者・居住者にとって重要な問題ですから、マンションや賃貸住宅の仕組みを十分に理解し、これを購入し、あるいは賃借する人々に対し、法に則った的確な情報を提供しなければなりません。重要事項説明において管理会社についての説明を行うことの重要性を再認識していただきたいと思います。

  • POINT

    • 分譲マンションや賃貸住宅では、多くの物件で、管理会社に管理の委託がなされています。
    • 取引の対象となる分譲マンションにおいて、マンション管理会社にマンション管理を委託している場合には、管理を受託している者のマンション管理会社の商号または名称、住所、マンション管理適正化法上の登録番号が、説明を要する重要事項となります。
    • 賃貸住宅の仲介において、賃貸住宅の管理が賃貸住宅管理業者登録制度に基づいて登録されている賃貸住宅管理会社に委託されている場合には、管理会社の名称、住所、登録番号が、説明を要する重要事項となります。
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