税務相談

月刊不動産2008年12月号掲載

相続税の物納に充てることができる不動産について

情報企画室長 税理士 山崎 信義(税理士法人 タクトコンサルティング)


Q

相続税の物納に充てることができる不動産について教えてください。

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • 1.物納の概要

     国税は、金銭で納付することが原則です。ただし、相続税について、延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により、納付を困難とする金額を限度として、一定の不動産その他の相続財産による物納が認められています。

    2.物納に充てることができる財産

    (1) 物納に充てることができる財産

     物納に充てることができる財産は、納税者の相続税の課税価格計算の基礎となった財産で、日本国内にあるものに限ります。物納に充てることができる財産には、次のとおり順位が決められています。

    ①第一順位
     国債、地方債、不動産、船舶

    ②第二順位
      一定の社債等、株式等、証券投資信託又は貸付信託の受益券

    ③第三順位
     動産
     物納財産の収納は、不動産など第一順位の財産から行われます。後順位の財産は、税務署長が特別の事情があると認める場合及び先順位の財産に適当な価額のものがない場合に限り、物納に充てることができます。

    (2) 物納に充てることができない財産

     管理処分に不適格な財産は、物納財産から除外されます。不動産については、次に掲げるものが管理処分に不適格な財産として、物納財産から除外されます。

     ①担保権が設定されていること、その他これに準ずる事情がある不動産

     ②権利の帰属について争いがある不動産

     ③境界が明らかでない土地

     ④隣接する不動産の所有者等との争訟によらなければ、通常の使用ができないと見込まれる不動産

     ⑤借地権の目的となっている土地で、借地権を有する者が不明であることその他の事情があるもの

     ⑥二以上の者の共有に属する不動産

     ⑦耐用年数を経過している建物(通常使用ができるものを除く)

     ⑧管理又は処分費用が収納価額よりも過大となると見込まれる不動産

     ⑨公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている不動産

    (3) 物納劣後財産

     換金が難しい財産は、他に物納に充てるべき適当な財産がない場合に限り、物納に充てることができます。

     不動産については、次のようなものが該当します。

     ①地上権、永小作権若しくは耕作権、地役権等が設定されている土地

     ②法令の規定に違反して建築された建物及びその敷地

     ③土地区画整理事業等の施行に係る土地につき、仮換地又は一時利用地の指定がされていない士地

     ④現に納税義務者の居住の用又は事業の用に供されている建物及びその敷地(納税義務者がその建物及び敷地について、物納の許可を申請する場合を除く)

     ⑤建築基準法に規定する道路に2m以上接していない土地

     ⑥過去に生じた事件又は事故その他の事情により、正常な取引が行われないおそれがある不動産及びこれに隣接する不動産

     ⑦市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成することができるものを除く)

    3.物納の再申請等
     物納申請した財産が管理処分不適格と判断された場合には、物納申請が却下されます。ただし、その却下された財産に代えて1回に限り、他の財産による物納の再申請を行うことができます。

    4.物納財産の収納
     物納が認められた場合、物納財産を国が収納し、これにより納税者は相続税を納付したことになります。
     国が物納財産を収納するときの価額は、原則として課税価格計算の基礎となった相続財産の価額をいいます。ただし、小規模宅地等の特例の適用を受けた土地等を物納する場合には、その特例適用後の価額が収納価額とな
    ります。

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