賃貸仲介営業

月刊不動産2017年5月号掲載

インターネット時代に賃貸仲介ビジネスで勝つ方法

宮下 一哉(株式会社船井総合研究所 不動産支援部 チーフ経営コンサルタント)


Q

 この繁忙期は、大きく集客を落としました。集客のために物件ポータルサイトを利用していますが、経費が増えるばかりで、売上げにつながりません。インターネット時代に賃貸仲介で勝てる方法はありますか?

A※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

  • Answer

     「ユニーク物件率」にこだわり、自社独自の物件品揃えの充実を図りましょう。インターネットでの部屋探しが前提となっている賃貸仲介ビジネスでは、「流通物件」での差別化ができません。

  • ここ数年で大きく変貌した賃貸仲介ビジネス

     ほんの3~4年前の賃貸仲介ビジネスでは、「物件品揃え数」の豊富さがモノをいう時代でした。流通物件でも何でも、一番多く物件情報数を持っていて、一番多くインターネットに掲載している会社が大きく集客できる時代でした。この頃の差別化要素は「物件情報のデジタル化」。仲介店舗間で「紙媒体」で流通していた物件図面をデジタル情報化してインターネットに掲載することに手間暇を費やし、複数の物件ポータルサイトに掲載をした会社が、各地域内でトップを取ることができました。そこでのポイントは「効率化」。今では当たり前になっている「物件情報データベースシステム」に物件情報を登録して一元管理し、そこから自社ホームページや複数の物件ポータルサイトに“コンバート”して掲載することができるようになったことで、「物件品揃え数」での競争が加速化していきました。

     2012年の秋、大手物件検索サイト「HOME’S」で「名寄せ掲載」がスタートしたことにより、賃貸仲介での競争は新たな局面を迎えます。それまでのように単に掲載すれば閲覧数が得られた時代が終わり、競合他社よりも写真の枚数や掲載の仕方で勝っている仲介会社だけが閲覧数を獲得でき、集客数を獲得する時代になりました。

     この「物件品揃え数の豊富さ」から「情報の質」による競争への変化により、「物件ポータルサイトへの掲載物件数に対する写真の登録率」が差別化につながるようになり、さらには、画質のきれいさや動画やパノラマ写真などでの競争へと進化しています。

     しかし、その対応には、写真を撮ったり加工したり掲載したりと多くの手間暇を要するようになり、現場のスタッフの方々に多くの「負荷」をかけるようになっています。「物件情報データベースシステム」も進化して、物件写真掲載を容易にする機能を備えるようになっていますが、いずれにしても「集客」を得るための工程が非常に長くなり、コストが多くかかるようになり、しかもインターネット上で閲覧される会社数は限られていますから、かけた広告宣伝費に見合った集客が得られない会社が続出するようになりました。昨年くらいからその傾向は強くなり、今年の繁忙期はこれまでになく厳しかったといえるでしょう(図1)。

  • 今、競合他社と差をつけるのは「ユニーク物件数」

     しかし、そのような状況の中でも、無益な競争に巻き込まれず、大きく集客・売上げをアップしている仲介会社もありました。そういった会社に共通する指標、それが「ユニーク物件数」です。ユニーク物件とは「その会社独自の品揃え物件」のことであり、物件掲載数に占めるユニーク物件数の割合を「ユニーク物件率」といいます。要するに「流通物件」とは正反対の物件(独自物件)を数多く品揃えしていることが差別化要素となり、それはそのまま集客に直結します。都市部においては既に「ユニーク物件数」による競争が本格的に始まっていますが、郊外エリアにおいては2017年以降に本格競争化してきます。ぜひ覚えておいていただき、次の繁忙期に向けて今から品揃えを強化すれば、必ず「過去最高の繁忙期」につながると思います。

     ユニーク物件の強化で最もわかりやすいのは「管理物件の受託数拡大」です。今からすぐに、この取り組みの強化をお勧めします。自社独自の品揃え物件であると同時に、市場ニーズに合ったリフォーム提案などもしやすいですから、ますます集客につながる差別化要素が大きくなります。空室オーナーを訪問したり、ダイレクトメールを送付したりして、自社への管理委託提案をどんどん進めていただければと思います。

  • 賃貸仲介は「チーム営業」の時代

     しかし、ただでさえ手間暇のかかる賃貸仲介ビジネス。店舗の営業スタッフの皆さんは「やることいっぱい!」ですから、「管理物件受託にまで手が回らないよ」と言う方もいらっしゃるでしょう。確かに、「これまでのやり方」を継続していたのでは勝ち目はありません。しかも、こんな超高速情報流通時代にあっては、「やり方」だけを整えても勝てません。要するに「勝てる体制で実行する」ということが大事です。そのポイントは、インターネット時代・スマホ時代の賃貸仲介ビジネスに合わせて「WEB戦略室」を作って「仕入れ・掲載・分析」を専任化し、同時に「営業店舗で営業スタッフが本来の営業活動のできる環境」を整備して、チームとして戦うところにあります(図2)。詳しい内容は、次回お伝えいたします。

  • POINT

    • ここ3~4年で賃貸仲介ビジネスの流れは大きく変わっている!
    • 物件掲載数、写真掲載数から「ユニーク物件数」へと差別化ポイントが変わっている。
    • ユニーク物件数を増やすために最も効果的なことは「管理物件の受託」。
    • インターネット時代・スマホ時代の賃貸仲介ビジネスに合わせて「WEB戦略室」を作る。
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